目次など
【内容】
- 第1章 不完全性定理とは何か
- 第2章 形式的自然数論
- 第3章 命題計算の無矛盾性
- 第4章 命題計算の完全性
- 第5章 述語計算の無矛盾性
- 第6章 述語計算の完全性
- 第7章 ゲーデルナンバリング
- 第8章 証明の再帰性
- 第9章 証明の数値的表現
- 第10章 ゲーデル述語
- 第11章 数学は矛盾している?
- 第12章 自己言及と矛盾性
書籍
雑誌
¥1,980 (税込)
著者:北田 均
四六判/180頁
自然数論S において命題Gを「Gは証明できない」という意味のものとする.
このような命題Gが自然数論S の言語で構成できたとするとき,「G が証明できる」と仮定すればG の意味から「Gは証明できない」ことになり矛盾である.そこでその否定「Gでない」すなわち「Gは証明できる」が証明できると仮定してみるとG は正しいはずであるから命題G の意味「G は証明できない」が成り立つはずだがこれは矛盾である.いずれの場合も理論S は矛盾する.したがって自然数論が無矛盾とすればG もG の否定も証明できない.これがゲーデルの不完全性定理の証明の要約である.
ゲーデルの定理がその時代に提出されたヒルベルトのプログラムに対する否定的結果と考えられていた経緯があるため,このような議論を行う際は再帰的に枚挙可能な命題の構成法のみが考察される.しかし不完全性定理の前にやはりゲーデルによって証明された一階述語論理に関する完全性定理を論ずる際はHenkin (1949) 以降一般にそのような制限は設けず,対象理論に関する議論は選択公理を含めた集合論の公理を仮定して行われる.この立場からゲーデルの不完全性定理を考察すると現代数学の基礎とされる集合論自体にゲーデルの論法を適用することになる.本書ではヒルベルトの提唱した形式主義を概観したのち命題論理,述語論理の無矛盾性と完全性および通常のゲーデルの不完全性定理の証明を述べる.その後このようなHenkin 流の立場から不完全性定理を考察しゲーデルの証明に潜む暗黙の仮定に迫る。
【内容】